誇張なしで、これまで見た中で最高の映画かもしれない。
家でサブスクで見たら気が散ってここまで感動しなかっただろうか。最終的には「いい映画を見た」と思うだろうが、ここまでどっぷりとあの世界に入れただろうか。
狭いスクリーンの狭い劇場で、音質もあまり良くなかった。映画館かサブスクかの違いは、映像やサウンドの物理的な美しさより、強制的に映画と対峙させられるかどうかの違いだろうね。
わざわざ金払って映画館に行くと「せっかく時間かけて見にいったんだから文句は言いたくない。褒めたい」モチベーションで評価は上がりがちだが、そういうんじゃなくて、本当によかった。人生に行き詰まった時やしんどくなった時に、見直したくなる映画だった。
「トイレ掃除を仕事とする役所広司が主役だ。間違いなく地味な映画だろう。そしておそらく退屈。見て後悔することはなさそうだけど」
くらいの前提知識で見た。
実際には、そこまで退屈しなかった。ほとんど何も起こらないのに。
そして、なんだろうな。分かりやすく感動するわけでもないんだけど、なんだかとても良かった、いい映画を見たという感想しかない。
記念にパンフレットを買った時、思わずショップの人に、聞かれてもないのに「この映画、すごく良かったですよ」と感想を言ってしまった。言わざるを得なかったというか。どうしても誰かに伝えたかったというか。
これ以上の言語化は意味がない。どんな言葉を使って褒めても、この映画の素晴らしさは伝わらないと思う。むしろ言語化することで、かえってこの映画が汚れるかもしれない。
そんな気がしたのは、記念のために買ったパンフレットを読んだから。
「この記事いらん。読む必要なかった」が半分を占めた。意識高い系の餌食になってしまった気がした。
ただ、無粋だった。
強いて言語化するなら、このパンフレットに出てくる用語を使わざるをえないからね。
言葉で語れば語るほど、この映画の余韻は濁っていく。それが明らかだから、この映画については語らない。語る必要はない。