Audible
「今夜すべてのバーで」中島らも
傑作アル中小説。
僕も3~40代はアル中一歩手前~ほぼアル中だった*1。まるで自分の心理が描かれているようだった(全てではないが)、聞いててすごく困った変な顔になってしまう。電車で聞いていたら隣に座っていた下の子に「どうした?」と聞かれてしまった。よほど変な顔をしていたのだろう。
この小説を聞き終えた翌日は酒を飲まなかった。本当に飲む気がしなかったのだ。翌日からまた飲んだ。今の酒量は一日にウィスキー20mlくらいを2、3杯、炭酸で割って飲む。ほろ酔い手前、体を冷やすだけである。七時、遅くとも八時前には飲酒を止めてほぼシラフで寝ている。秋になったらさらに酒量を減らしたい。警戒だ警戒。
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「自我と無意識」C・G・ユング
何でAudibleにあるのか不思議だ。
理解するのに適度な集中力が必要で、理解したとしても心が乱されない。退屈な授業を聞いている感じである。睡眠導入によい。と思って着手。
フロイトもユングも科学ではないという認識である。仮説しかない。実証はできない。でも当人たちは至って真剣だし、患者を実際に治しているし、客観的記述を目指している。やはりその内容は興味深い。個人的無意識とか集合的無意識とかアニマ・アニムスという単語を久しぶりに聞いて、復習してみるか、と思った。
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「森に眠る魚」角田光代
お受験・ママ友・群像サスペンス。面白いが疲れた。
閉じたママ友関係で徐々に正気を失っていく描写が上手い。旦那は空気。「とにかく分かってない」「分かってくれない」テンプレ存在である。
コミュニケーションが興味深い。自分が聞きたいことを言ってもらうまで、何度も夫に問いかけて最後は無視される。一方、自分が聞きたいことが聞けるとすぐに心を許す。理解と共感が最優先である。危ういと思う。敢えて「女性のコミュニケーション」ステレオタイプを押し出したのか。閉塞したママ友・人間関係には安易なソリューションなどないということだ。
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「逆ソクラテス」伊坂幸太郎
巻を置く能わずのジュヴナイル寄り短編集。面白かった。メインの登場人物は小学生 である。大人になってからの振り返りが少々。ちらほら勢いに任せた無理筋展開があるが、子供も楽しめる小説なので問題ない。
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「青春ゲシュタルト崩壊」丸井とまと
ケータイ小説、というジャンルらしい。青年期失顔症がテーマ。
生真面目なできる子がヒロイン。いろいろあってストレスが溜まり青年期失顔症を発症する。大変に困るヒロインである。当然、幼馴染イケメンが構ってくれる。見た目は金髪のヤンキー風。口も悪くクラスでは怖がられている。もちろんヒロインには優しいのである。だって小学生の頃からヒロインが好きだった。この金髪ヤンキー、成績もよいらしい。パフェも好きなツンデレ野郎。そんな彼のサポートを受けながらヒロインは自分を取り戻していく。要するに少女マンガである。なんか素人がカウンセリングの真似事みたいなことやってる描写はフィクションでもアカンと思うが、まあ、誰も気にしないか。
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書籍
「自我と無意識」を聞いて久しぶりに図書館で本を借りて読んでみた。
「史上最強カラー図解 心理学対決!フロイトvsユング」山中康裕 編著
うさんくさいタイトルでダサポップな装丁。どっこい執筆陣はアカデミックで中身はまともである。
ある種の女性が「ダメンズウォーカー」になるのは「タナトス(死への衝動)があるからだ」。とか、馬が怖い少年を分析して「馬は父親だ。エディプスコンプレクスだ」とか、人間は無意識のリビドー(性衝動)に突き動かされているとか、結論だけ聞かされると「うーん、どうでしょう?」と思ってしまうフロイトである。それでも一通り彼の功績を眺めるとやはり興味深い。
ユングの言っていることはほぼ「怪しげスピリチュアル」系なのだが、あくまで心理学の範疇にとどまるから誠実さを感じる。もちろん本人は極めて真剣である。
面白いか面白くないかだけで言えばユングの方が面白いと思った。フロイトは偏ってるし言語化し過ぎな気がする。一方、ユングの自我・個人的無意識・普遍的無意識の"自己 三層構造"は不思議と納得がいく。アニマ・アニムスも魅力的な概念だ。
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「無意識の構造」河合隼雄 中公新書
河合隼雄はユング派の心理療法家である。ユングの著作を当たるのはしんどい。前掲の「自我と無意識」は比較的分かりやすいが、神秘・オカルトを扱った意味不明の論文も多い。フロイトには有名な後継者がいてユングに少ない(もちろん僕が知らないだけ)のはそういう理由もあるだろう。
ユングの「自我と無意識」を分かりやすく整理・解説してくれる本だった。
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「コンプレックス」河合隼雄 岩波新書
中公新書より学術的で読み応えがある。初版1971年。全く古びていないことに驚く。
自分の強力なコンプレックスを一種の「アンテナ」として、他人のコンプレックス、従ってそれに基づく失敗や悪事を嗅ぎつけ、それを喰いものにして生きているような人も存在する。
(第3章 コンプレックスの現象 p102)
この文章のすぐ後にナチスや不良少年を手なずけて利用する犯罪集団の例が出てくる。失礼ながら参政党を連想してしまった。NHKの政見放送で神谷党首の話を聞いたが実に巧妙である*2。「何かおかしい」「漠然とした不安」「騙されている?」「相手にされてない?」といった懐疑やルサンチマン、怒りを上手くついてくる。複合的な感情、まさにコンプレックスである。
参政党に比べると自民や立民は無難だが地味でぱっとしないし、公明党、社民党あたりはアップデートできてない印象がある。共産党はさすがにぶれていないものの、その他の政党はところどころ違和感(着眼点そこ?偉そうだなオイ、など)が出る。参政党にはヘイトやカルトを隠しながらも上手く煽るブレインがいることを伺わせる。
ポピュリズムなどと言われるが、この本を読んでむしろ「大衆の無意識のコンプレックスを上手く利用しているのが参政党だ」と思った。統一教会やら森友が話題になってもなお安倍元首相を支持する心理もコンプレックスで説明できそうな気がする。それこそトランプ支持の原動力はエリート・コンプレックスじゃないかね。
"はてブ"では以前から参政党への警戒感があった。最近は大手週刊誌系メディアも報道し始めているが、まあ、間違いなく伸びるだろう。人は合理的ではない。ファクトよりもコンプレクスなのだ。
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別の話。
自立してゆくためには、われわれは火を盗まなければならない。それは(略)「避け難い盗み」なのである。
(第5章 夢とコンプレックス p151 『プロメテウス・コンプレックス』の説明)
中年以降に精神的な危機に陥る人や「金や女でやらかしてしまう」おっさんは、若いときにちゃんと火を盗んでこなかったのだ。という説。おっさんの僕は妙に納得してしまった。僕も何度か「火を盗んで」きたから今もギリギリ何とかなっているのかもしれない。後悔もあるし、今思い出してもヒヤッとするけれど、間違ってなかったのかな。
人生で幾度か感じてきたちょっとした危機や、今も引きずる葛藤がコンプレックスで解釈できるような気がした。素人の知ったかぶり分析が危険なのは承知だ。誰に迷惑をかけているわけでもない。あるいはこの程度の迷惑ならいくらでもかけてきた。
河合隼雄の書籍はユング心理学をざっくり掴みたいときにとても助かる。若い頃にも読んだはずだがあまり覚えていなかった。おっさんになって読み返すといろいろ沁みるものがある。良書である。
コンプレックス (岩波新書 青版 808) | 河合 隼雄 |本 | 通販 | Amazon
ちなみに僕は河合隼雄の講演会に行ったことがある。確かどこかの丸善のホールだったかなあ。話の内容は覚えてないが何か質問したと思う。ただ質問したかっただけで、内容は覚えてない。軽妙な返答を頂いた記憶は残っている。
村上春樹の愛読者ならならこちらも面白い。
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アニメ
「宇宙人ムームー」
相変わらず雑なストーリー。人間の描写も雑。家電要素も雑になってきた。まんべんなく雑なのが良い。
13話でOp/Edが変わった。Opは2000年代?の懐かしい感じ。Edは作詞作曲 奥田民生/編曲 栗コーダーカルテットというクレジットを二度見してしまった。
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「忍者と殺し屋のふたりぐらし」
やはり5話目以降のテンポが良くなってきた。6話もバカバカしく面白い。7話はキツいが面白い。あっさり登場人物が殺されるのが売り?のストーリーである。特定のキャラにうっかり感情移入してしまうと「簡単に殺さないでくれよ」とハラハラしてしまう。
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「ダンダダン」
13話でヒロインが襲われるシーンはぞわぞわする。(もちろん助かるのだがそれでも)
「無職転生」
Audibleで英訳朗読を聞いたついでにアニメを見てみた。
ニート引きこもりが転生して人生をやり直す話。それこそコンプレクス丸出しの大人向けコンテンツである。作画やアニメーションは綺麗なものの、性描写が妙にいやらしかったり、女性が見たら嫌悪するであろう描写もちらほら。
それでも「オタクの雑な妄想」駄作に陥ってないのは、ニート引きこもりの痛々しさから(いささか露悪的だけど)逃げてないからかな。これを見て励まされる人もいるんじゃないかと思われた。