春の秩父旅行で「あの花」ラッピング電車に乗った。
秩父ではラッピングバスを見かけた。
放映から10年以上経つようだ。
10年経っても公共交通機関やイベントで利用されるアニメって珍しいんじゃないか。機会があれば見たい、と思っていたら今月Netflixに来た。いいタイミングだ。ありがたく着手し、3日間で「劇場版」含めて見終えてしまった。
内容は小学生からつながる恋愛&友情もの。
念のため、万人受けのスカッとエンタメではないと思う。
正直、圧倒された。これほど心に迫る青春人間模様は、アニメに限らず映画・小説・ドラマにもなかなかない。(そんなにたくさん見てるわけじゃないけど)
数日間このアニメの余韻に浸り、もやもやと考えさせられた。
前半は違和感があった。
幽霊?ヒロインの"めんま"。
主人公の"仁太"以外には見えない設定なのに、ラーメンを食べたり蒸しパンを作ったりする。第三者も薄々存在を感じる。しまいには筆談も始める。
デミ・ムーア「ゴースト/ニューヨークの幻」は、幽霊になってしまったパトリック・スウェイジが、デミ・ムーアに大事なことを伝えようと頑張るところがストーリーの肝だが「あの花」はアニメの力ですっ飛ばす。
でもまあ、細かい話である。中盤以降でやんわりと回収されて「ま、いっか」と納得させられる。
ヒロイン"めんま"の癖が強い。15歳設定?のはずだが振る舞いはほとんど小学校低学年だ。でもまあ、幽霊だから仕方ない。と思って見ると次第に分かる。「なるほど、"めんま"は小学生で時間が止まってるんだな」。これも納得である。
それより人間関係である。
仁太は受験に失敗して底辺高にいく羽目になり、高校生活に幻滅して引きこもる。
そんな仁太に、幼馴染み"あなる"(安城 鳴子。小学生の時にイノセントに定着してしまった)、”ゆきあつ”、"つるこ"は当たりが強い。特に後者の二人は最初「鼻持ちならない優等生」として描かれる。テンプレ通り嫌な奴らである。
"ぽっぽ"はいい奴だけど、おちゃらけつつも微妙に距離を置いている感じだ。
仁太抜きのやりとりもギスギスしている。
きつい言葉のやり取りや感情のすれ違いが続く前半は、友だちとはいえ距離感おかしいんじゃないの?とわりと冷ややかに見てしまう。
ところが小学生時代の回想が繰り返し挿入されるのを見るうちに、だんだん分かってくる。
かつての友だちにも自分にもイライラしているのだ。思春期なのだ。”めんま”へのそれぞれの想いも、ずっと喉につかえている。
それに、小学校時代に毎日遊んでた奴らとならこういうやり取りになるよな、と。なんの留保もなく、ストレートに本音をぶつけてしまう。嫌な顔をそのまま見せてしまう。その結果、悪気はないのに、お互いの気持ちがどんどん離れていく。
そういえばかなり鋭い言葉のやり取りはあっても、相手に暴力を振るうとか、聞くに耐えない言葉を投げるようなことはなかった。お互い小さい頃からたくさん遊んできた。そんな積み重ねがあっての、遠慮のないやり取りなのだ。
彼らの関係が分かるにつれて、物語に抵抗なく入れるようになる。
どんどん登場人物が魅力的に見えてくる。
仁太。
高校受験で挫折、周りにも自分にも幻滅して引きこもっていたが、"めんま"のためには、と一歩踏み出す。窮地に陥った”あなる”も自然に助ける。こんなカッコいい主人公はなかなか見ない。(あまり安直にステレオタイプに決めつけたくないが)男性作家ありがちなマッチョ・男前主人公とは全然違う。ちょっと乱暴なようで、挫折と優しさを包含した男らしさである。
"あなる"。
準ヒロイン。友だちに流されやすい。真面目で几帳面。でも、あまり勉強はできない(リアルだ)。
底辺校の友だちの影響を受けて見た目はギャルになっていくけど、中身は変わらず真面目な小心者。ずっと仁太に好意を寄せているが、仁太は眼中になく、"あなる”のギャル化も気に入らない。
設定もリアルだし、セリフもしっくりくる。
上の二人より影が薄いが、"つるこ"、"ぽっぽ”も魅力的だ。
ただし”ゆきあつ”はネタ枠。それでも物語に欠かせない存在ではある。
仁太が頑張りだしてからの展開が素晴らしい。
「超平和バスターズ」の再結成である。
小学生の頃のわだかまりを皆それぞれの解消し、まっすぐな気持ちを取り戻し、友情が復活する。皆の人生がレベルアップして、次に進む。
脚本とセリフが本当に素晴らしいアニメだった。
10年経っても持ち出されるわけである。