sakanatonikuの日記

料理、アニメ、映画鑑賞と作詞作曲(趣味)

男の子の好きが詰まった映画

(映画の小物に関する記述あり)

 

ジブリ映画で父親像が薄いのは、宮崎駿氏の父君が戦争で亡くなられて、母君が女手一つで子供たちを育てられたから」(Fake!)

 

なぜか、そう信じていた。自前の妄想だろうか。あるいは昔、出鱈目な出版物があって、そんな文章を読んだからかもしれない。

 

GR IIIx 新井薬師

 

記憶とはいい加減なものである。新しい古いによらない。黒澤明の「羅生門」だ。人は都合よくテキトーに記憶を改変するものだ。記憶を頼りに仕事をしていると、たまに不安になる。自分でもファクトチェックが欠かせない。こわいこわい。

 

君たちはどう生きるか」を機にいくつか宮崎駿インタビューを読んでみた。

  • 風の帰る場所―ナウシカから千尋までの軌跡
  • 続 風の帰る場所
  • 時代の風音
  • 腰ぬけ愛国談義

父君は戦後も生きておられたと知った。「あれ?」と思うと同時に「なるほど」と思った。ハウルのチャラくて頼りないキャラは父君の影響だったか。宮崎駿好みとは思えない「イマイチ頼りない大人の男」がしばしば登場するのも納得だ。

 

そして掲題の件。

 

GR IIIx 新井薬師

 

「男の子の好きが詰まった映画」というタイトル自体、今は時代錯誤かもしれない。

上等だ。そもそも時代錯誤の回顧話だ。

 

映画を観た後、ああ!と振り返ったのが以下のシーンである。


・おじいさんに肥後守の研ぎ方を教わっている

そうだった。こういうしょーもないことは父は教えてくれない。父親は「そんなもの研いだところでたかが知れてる」と鼻で笑うだろう。真面目に教えてくれるのは祖父あるいはどこかの暇なおっさんである。そして肥後守とは、少年にとっては可能性を秘めた万能ツールなのだ。

 

・竹の弓を作ってヘロヘロと試し撃ちをしている

そうだった。僕も竹の弓を作った。小学生の時だ!僕の場合、剣道部の近所のお兄さんから使えなくなった竹刀が配給されて、それで工作した!大人は誰も止めなかった。ススキだとか小枝とか拾って、友達と飛ばしっこしたり、一人で撃って遊んだものだ。威力は映画通りだ。万一目に入ったら危ないくらいで、人が怪我をするとか、生き物に危害を与えるものではない。

 

・五寸釘を研ぐ

五寸釘もやはり子供にとってはスペシャルなものだ。子供の遊びだとしても投げたりすると本当に危ないので、小学校で禁じられていた記憶だ。僕より一回りか二回り上の世代では普通に遊び道具だった。デカくて不穏で禍々しくて、子供の手にはずっしりと重かった釘の感触を思い出した。

 

ああ!懐かしい!そうだった!と感銘を受けた(ほとんど鳥肌だ)と同時に、僕の親世代である宮崎駿がこれを作ったことに驚いた。なんという記憶力か。あるいは歳を取るとかえってこういう記憶が蘇るのか。

 

そして、僕より若い人には(都会育ちであれば僕と同世代だとしても)理解できない感覚だろうな、と思った。

 

このシーンによって、主人公の眞人の小学生らしさが一気にリアリティを持つ。

 

主人公が「いい弓があるよ」と言われてもあくまで自分の作った弓を頼りにするのも大事なポイントだ。自分で工夫して弓を作った時は、世界一の武器だと思うし、自分が無敵と思えるのだ。

 

昔の感覚を宮崎駿に呼び覚まされ、本当にありがたいと思った。

 

GR IIIx 新井薬師

Webで偉そうに「君どう」を解説している若造どもがいるが、肥後守を宝物にしたこともないんだろうし、竹の弓を作ったこともないんだろう?それであの映画の何を分かったつもりになって偉そうに語っておるのか?ああん?とおじさんは思うのである。

 

あのシーンを「ああ、小刀ね。研いだね。次は、弓を作ったのね。わかったわかった。次は?」と流した人は、大昔に子供だったおじさんたちにとっては血湧き肉躍るワクワク体験だったのだ。と補助的に解釈して頂ければありがたい。

 

もちろん、細かく解釈したから良い、という話ではないし、個人的な「わかりみ」で共鳴すれば理解したとも言えない。それに「僕が若い人たちより「君どう」を理解している」と主張しているつもりもない。本当に!

 

若い人たち若い人たちなりに強烈な印象を受けただろうし、歳をとってしまった僕には残念ながらそれを感じられないかも知れない。

 

おじさんどもが偉そうに講釈を垂れていても、真面目に受け止める必要もない。鼻で笑ってやれ(岡田なんとかとか

 

そういうことだ。

 

全部を理解することは不可能なのだ。そして、映画だろうが音楽だろうが小説だろうが、何かを安易に理解したつもりになって、他人に偉そうに語る人は信用しない方がよい。

 

GR IIIx 新井薬師

他にも「男の子」が好きなものや人が溢れているのが「君どう」だ。例えば、魔力のある鳥の羽。優しいおばあさんたち。偏屈なお婆さん。強くてかっこいいお姉さん。そしてもちろん青鷺、などなど。

 

何か見落としたものもありそうだ。もう少し頭の中を整理して、もう一度見に行くつもりだ。