sakanatonikuの日記

料理、アニメ、映画鑑賞と作詞作曲(趣味)

判断を保留する能力

 

GR IIIx 新井薬師前

 

はてブ(ックマーク)を日に数回見てしまう。

有意義なサイトが紹介されたり「そういう考え方もあるのか!」と感心するコメントを目にしたりと啓発されることがある。一方で上から目線の冷笑コメントが目についてイラっと来ることも多い。いや、むしろイラっとくることの方が多い。イラっとくるのは精神衛生に良くないので、差し引きはマイナスである。マイナスだったら見ない方がよい。その考えに従えばWebは全て見ない方がよい。有益な情報をピンポイントで調べて、調べ終わったらブラウザを閉じればよい。しかし、なかなかそうもいかない。うっかりくだらないサイトを見てイライラ、ニヤニヤするばかりである。

 

先日も「おっ」というTogetterを見た。

 

togetter.com

自分は、上司や顧客との関係を想定して理解した。

 

「判断を保留する能力」と「抽象のままにしておく能力」は、上司にはなかなか期待できないのである。(※後述)

 

GR IIIx 新井薬師前

上司にうっかり不確定情報を上げると大抵ロクなことにならない。結論を急がせられ、余計なタスクを課される。他の(より優先度の高い)仕事をしてただ待てばよいのに、それができない上司ばかりだ。不確定情報を話すなら、こちらの話をテキトーに聞き流す上司か、あるいは信頼関係の強い上司でなければならない。

 

当該Togetterの主は不確定情報を部下に流すとロクなことにならない、と語る。勝手に動き出して損害を出したり、後で怒り出したりするとのこと。

 

なるほど。上司に上げるか部下に流すか、方向性は逆だが、Togetter主と僕の経験は類似しているようだ。

 

Togetter事例の部下に対するのと同じように、判断を保留できない上司(顧客)に対しては部下(ベンダー)が情報を流さなくなる。問題が発生してもすぐには報告が上がらない。その原因が判明し解決方法が明確になりタスクが固まって初めて、上司は「問題」を知らされる。この場合、部下が優秀であれば何も問題ない。

 

GR IIIx 新井薬師前

しかしながら「判断を保留する能力がない」人が即「無能」というわけではない。

 

直感的・論理的にすばやく「問題」を把握してその「原因」の仮説を立て、「タスク」に落とし「期限」を切ってテキパキと処理していく。そして(これが最も重要なことだが)誤りがあればそれに気がついて修正する。頭が切れて適切に反省できる人にとっては「保留する」オプションは重要ではない。

 

何かと「保留・逡巡」している人より、素早く仮説を立ててテキパキとタスクをこなす切れ者の方が出世するのは当然である。(残念ながら)

 

だから上司には「判断を保留する能力」が備わっていない。(※後述受け)

 

部下から不確定情報をインプットされると「切れ者上司」は「その問題の原因はこれこれだから、こう解決すればよい。タスクはこれとこれだ。期限は来週末」と即座に期限付きタスクに落としてしまうのである。

 

ところがその判断の元が不確定情報だし、現場をきちんと見ているわけでもない「切れ者上司」の指示はどうしてもピントがズレる。結果、あまり意味のないタスクに現場が振り回される。

 

GR IIIx 新井薬師前

「判断を保留する能力」のある顧客と仕事をしたことがある。

 

プロジェクトを進めていれば、現場では意思決定が難しい課題が必ず出てくる。顧客の将来の運用に関係するので勝手に決められない。部署間の政治問題に関係しそうだ。など。現場からはベストの提案ができない。解決方法を顧客に考えてもらわなければならない。

 

そこで顧客に問題を提示して「どうしましょうか?」と聞くと「判断を保留する能力」のある顧客(判保能客)はこちらの話を聞いて「ふーん」などと腕を組み「まあまた今度むにゃむにゃ」などとのたまって、結論を出さないままミーティングを終えることがあった。

 

最初は僕も「何だこのお客さんは」「さっさと決めてくれよ」と呆れていたのだが、判保能客が先送りしたことで、数週間後には問題が自然解決したり、おのずから選択肢が消えて結論が収束したり、そもそも問題が消滅したりと、上手くいくケースが多々あったのである。

 

当時、若かった僕は「そういう仕事の仕方もあるのね」と感心したものだ。

 

ちなみにその人は「頭の回転が良く鋭い(ことを見せつける)」タイプではないものの、頭の良い人であった。思い返せば「俺って頭の回転が速いぞ!キレッキレやぞ!ドヤ!」と振る舞って悦にいってるタイプより(多いね)、一呼吸置いてから鋭いことを言ってくるタイプの方が、結果的には優秀な気がする。前者は失言やミスが多く、隠しきれない自己愛が障害となりがちである。後者の判断の方が間違いは少ない。

 

「判断を先延ばしにする」と聞くと時代遅れの古い日本的経営者のような印象があるが、単なるステレオタイプである。即断即決、君子豹変す。みたいな独裁者が素晴らしいかといえば、そうでもない。最近のイーロン・マスクがよい例だ。バランスが重要だろう。

 

今まさに一か八かの判断が必要とされる時に、失敗を恐れるサラリーマン感覚で先延ばしするようでは未来はないし、いくら速くても下らない決断ばかりでは失笑される他ない。

 

不安ドリブンで動く人ばかりではない。切れ者の実務家こそ「判保能」や「あえて具体化しない能力」が大事なのである。

 

#先送りばっかりだと話にならないけどね

 

GR IIIx 新井薬師前