フィリップ・K・ディック
有名なSF作家である。
SFを読み漁った中学生時代に間違いなく触れたはずだけどほぼ記憶に残っていない。
読み返して、何となく理由がわかった。
壮大な話なのに分かりやすくはない。「なんだ?どういうことだ?」と読み進めるうちに「ああ、そういうことか」と見えてくる。(よい小説にはこのパターンが多いのだが)
しかし、構想の壮大さとは別に、ストーリーが呑み込みにくい。解説者によると「プロットが破綻しがち」とすら書いている。
SFなのに、当時のアメリカの風俗や文化が当たり前に混入している印象。パラレルワールドと言われれば文句は言えない。でも読んでいて引っかかる。
星新一はショートショートを書くにあたって「なるべく時代遅れにならない言葉を選んだ(それでも黒電話などが残ってしまった)」というが、ディックはあまり気にしないようだ。
人物描写が雑で奥行きが感じられない。反応が極端で感情移入が難しい。
世界観が魅力的なのと対照的だ。
結局は「B級ハリウッド映画」という印象になる。葉巻をふかしながら人を殺す、みたいな。
いろいろ忖度・補強しながら読まないと楽しめない小説で、中学生の僕には荷が重かったのだろう。
でもまあ、それらの欠点を差し置いても魅力的な小説であることには間違いない。
ディック原作の映画「ブレード・ランナー」は間違いなく傑作だし、映画「マイノリティ・リポート」も悪くない。想像力を強く刺激する作家である。それにハリソン・フォードやトム・クルーズが出てくれば、人物描写の問題も解消というわけだ。
「高い城の男」もそれなりに面白かった。
ドイツと日本が第二次世界大戦に勝った、という世界線だ。ドイツ、日本、アメリカ、イギリス全方位に対してシニカルである。特にドイツに手厳しく、日本に対しては少し手ぬるいかもしれない(個人の感想。
そして易占い
この小説の鍵になっているのが「易占い」である。
「あたるも八卦あたらぬも八卦」。変な格好したお爺さんが筮竹をじゃらじゃらさせて占うやつである。
この小説の登場人物は、全員ではないが、局面局面で自ら占い、何かしらの学びを得る。
これが、なぜか妙に刺さってしまった。
なので本を買った。
(表紙イラストの壺と煙は易経と関係あるのか?)
これだけでは占えない。
だからサイコロを買う。
筮竹で占う以外に、コインやサイコロを使う方法も認められているようだ。ラディカルなのである。
8面サイコロを2個振ってその組み合わせで64通りの卦のうち、一つが定まる。
これでメインの占いが決まる。
6面サイコロを振ると、6つの爻(こう)の一つが定まる。
これでサブの占いが決まる。
上記をテキトーに解釈するのが易である。(雑
「高い城の男」ではコイン3枚による方法が用いられる。老陰、老陽を用いる複雑な方法で解釈の余地が増える。占いが恣意的になり過ぎるのでは?と感じる。まずはこの8面x2、6面x1でよいのではないか。
「高い城の男」解説だけでは分からない(少なくとも僕には)。以下の二つをざっと読んだら「高い城の男」に出てきた占いは後追い確認できた。
太古の意味深な文章を、好き勝手に自分に引き付けて解釈するのが易経である。
当然怪しい人や怪しい情報は多い。
しかし易経それ自体はかなり魅力的に思える。まずは試行錯誤しながら勝手に占ってみようと思っている。
なぜ僕が易経に惹かれたのかは、ぼちぼち言語化していきたい(まだ少しもやもや