sakanatonikuの日記

料理、アニメ、映画鑑賞と作詞作曲(趣味)

身繕いのこと

 

アラフォー、アラフィフになって「ああ年を取った。人生が次のフェーズに入ってしまったなあ」と感じてしまったタイミングがあると思う。

 

きっかけは人それぞれだろうが、おそらくベスト3には「うっかり油断した自分を鏡で見てしまった瞬間」が入るに違いない。

 

目も口も半開き。八の字眉で油断しきった顔がふと鏡に映ったとき、老いを一層強く感じてしまうのである。はい。今さらアゴ引いて眉と目に力入れてもダメです。油断した顔があなたが普段見られてる顔なのです。

 

これにはバリエーションもあって、外出先で(感じ悪い老けたおっさんがいるな)と思ったら、ショーウィンドウに映った自分だった。というパターン。これもなかなか衝撃的である。

 

 

次に「おっさんやなあと思ったら自分より年下だった」パターン。

 

以前、釣りの上州屋に行ったときにおっさんに接客されて(うわあ、おっさんだ)と思ったらよく見ると多分年下。しかも店員さんサイドも(うわあ、おっさんだ)と思っている気配があった。三すくみというが、おっさんを二人向かい合わせた場合は二すくみも成立する。

 

接客で気を遣われるようになるのもおっさん化の兆候だろう。もちろん(おお。何と威厳のある方だ。尊敬すべき方に違いない。丁重にお相手せねば)ではない。(うわあ。おっさんだ。面倒なこと言い出さないかなあ。怖いなあ。とりあえず丁重に扱っておこう)という話である。

 

書いてて何だか嫌になってきた。

 

 

でもまあ、これが現実。

 

他に、電車で僕の隣の空き座席に、なかなか人が座らなくなったという印象が増えてくる。どうやら気のせいではなく、自らのおっさん化と関係がありそうだと気がついた時、これまた衝撃を受けた。

 

仮にアラフィフの三船敏郎チャールズ・ブロンソン菅原文太が座っていたとして隣に座るのを避けたくなるのは分かるが(バイオレンスの気配だ!)、僕はそれほど強面ではない。また、さほど臭くも、不潔そうでもないはずだ。それでも若い男女・学生、小さいおばさん、お婆さん、枯れたお爺さんの隣よりも、おっさんの隣が座るのに抵抗があるのだろう。多分。

 

若い頃はこうではなかった。僕の隣の空き席は普通のスピードで埋まったはずだ。体型は変わっていない。やはり「おっさん化」が原因の一つではないか。僕が若い頃も、あくまで他のおっさんの隣よりも早く埋まっていただけ、という相対的な事象だったのかと悟る。

 

 

そういうものだ。と諦めてしまっても構わないが、何だか悔しい気もする。

 

というようなことを、いつもの美容師さん(少し年上)に何となく話すと「清潔感が大事ですよ」と返るのが常である。清潔感ねえ。なるべく清潔にはしてるんだが、それとは別の話であろう。

 

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リモートワークが始まった当初、散髪に行くのをサボって少し伸ばしてみたことがあった。当人としては髪の量が多い頃の坂本龍一のイメージでいた。顔は似ていない。客観的にはどうだか知らぬ。最初は気が変わって何だか面白いのだが、だんだん鬱陶しくなってくる。清潔感とも程遠い気がする。

 

伸ばすのも限界だと思って美容院に行って「思い切ってさっぱりしたい」と伝えると「ツーブロックいっちゃいますか」と言われた。

 

 

「校則で禁止するとかしないとかのアレですね」

「そうです。横を薄くバリカンで刈っちゃいますよ。いいですか?」

「いっちゃってください!」

「本当にいいんですね。いっちゃいますよ」

「いっちゃってください!」

ということで、今は白髪多めのツーブロックおじさんである。

 

最初は頭の横がゾリゾリして楽しいが、すぐに慣れる。

家族も気が付かない。地肌の見える側頭部を見せて「どうだ」と言っても大した反応はない。仕事関係の人も何も気が付かない。そもそも見てもいない。

これ校則で禁止する必要あるの?と思う。さっぱりしていいじゃないか。刈り上げよりオシャレだからNGなのか。よく分からない。ツーブロックにしたからオシャレというわけでもないだろう。

 

 

残念ながら清潔感が簡単にアップするわけでもないようだ。

美容院の翌日にはボサボサである。

 

次の回に「ヘアアイロンで整いますよ」と実演される。整えたあとでムースなどでセットするのだ。

おっさんがヘアアイロンか。と思いながら、子供に貸してくれと言ってみた。一瞬だけ嫌な顔をされたものの、「これを使え」とお古を提供してくれた。

 

やってみるとなるほど髪の毛がまとまって面白い。意外と時間もかからない。

というわけで今はツーブロックヘアアイロンおじさんである

それでも周りの扱いが目に見えて向上するわけではない。それほど簡単な話ではないのだ。

 

 

でもまあ、大きな一歩である。

学生のころは髪型を気にしたことはなかったし、髪型を気にするなんて逆にカッコ悪いぜなんて妙なファッション逆張り思想だった。

ひねくれた考えだけど、別に若い頃はそれでよかったと思う。今でももっさいボサボサ学生は珍しくないし、そういう高校生も悪くない。若さである。

 

とはいえ、年を取ってきたら少し小綺麗にした方がよいのは間違いなさそうだ。清潔感を追うだけなら、ブランド品も高級時計も高級靴もいらない。無印ユニクロABCマートで十分である。

 

何より意識が変わる。姿勢や表情にも気をつけるようになる。外出が少し億劫ではなくなる。悪くないのである。

 

美容師さんにそう言ってみると「髪型を整えるってそういうことですよ」と満足そうに言われたのである。