おっさんになると、おっさんであるというその一点だけで、多方面から煙たがられるようになる。(嗚呼
仕方ないことだ、と開き直ってもいいのだが、少し足掻きたい気はする。
電車に乗っていて、僕の隣になかなか人が座らない(※)というのは、結構気になるものだから。
(※) 若い頃はそういうことはなかった。気のせいではない。僕がすごく太ったとか、臭いとか、そういうこともないはずなのだ。
なので「清潔感」というキーワードを念頭に髪を整えたり、姿勢とか表情に気をつけたりする。効果は分からないが、とにかく足掻く。
難しいのはファッションである。
とにかく興味がない。考えたくもない。
そのくせ「無難な服は嫌だな」みたいな面倒臭いこだわりを持ってるから始末が悪い。
いつ買った服だよ。って感じのお兄さんおっさんがいるじゃないですか。
あれがかつての僕ですわ。
大学生の頃のワードローブを、30くらいまで普通に着てたかな。
何も考えてない。そこにあるから着る。
それでも、40代くらいになると、大学生の頃の服や、何も考えずに購入した服が、ちょっと変に見えてくる。さすがに。
ファッションに金をかけてみるかと。もう俺もいい年だし。などと、おっさん向けファッション誌など読むと唖然とするほど高価である。パンツが4、5万から。シャツ3万。ジャケット10万。コート20万。それが普通。ハイブランドはもっと高い。
そういう情報を前向きに吸収していると、あっという間に洗脳されてしまう。おっさんのオシャレだと、この辺りがスタンダードなのか。パンツ2万台、シャツ2万切るならむしろ安いんだな(オイオイ。
最初は授業料。などと思って、ハイブランド未満の服を買ったりもした(ハイブランドはとても買えない)。トータル20万くらいは使ったかな。思い出したくもない。その金でいいレンズが買えたじゃないか。Sh*t。買った服は今はほとんど残ってない。なんだか「おかしいぞ」と思い始めた頃、他人のファッションブログを見て、これってただの買い物中毒じゃん。こいつ、何やってんだ?いや、俺もか。と目が覚めた。
以降、西武5F東武5F他セレクトショップには近寄っていない。業界の人には申し訳ないけれど。
おっさんファッション誌を見る必要はないのだ。「無印、ユニクロで十分です」という情報が転がっている。黒、紺、グレー単色でいい。サイズ感が重要だ。困ったらマネキンコーデをそのまま買え。
なるほど。と思って買う。ちょっと「いいかも」と思ったら2着、3着同じのを買ってしまう。買い換えるのが面倒だし。スティーブ・ジョブズだって黒のタートルとジーンズを何着も持ってたっていうじゃん?(それをオシャレとは言わない
もう安心だ。新しい服を仕入れた。
そして、その服を5年とか10年と着続けてしまうのである。
古くなった服を買い替えるとか、更新するという発想がない。
ヒートテックも何枚もあるが、何年たったか分からない。もろもろ怪しい僕の記憶だが、とりわけ服に関する記憶はまったく当てにならない。数年前のような気もするし、10年以上前のような気もする。
流石にヒートテック10年ものはないか。しかし捨てた記憶がない。ヒートテックは出始めの頃に買っている。ということは、下手をすれば15年以上経つかもしれない。いや、まさか。いやいや、その”まさか”か。
かつての9分袖は12分袖くらいに伸び、シャツの袖から押し込んでもいくらでもはみ出てくる。首周りも垂れ下がり、生地は擦り切れて肌の色が透けて見える。でも「まだ着られる」と思って捨てられない。(さすがにこの間捨てた
忍者の修行で竹を植えてその上をジャンプする、というのがある。
竹は成長が速い。1m、2mと、どんどん高くなり、それを飛んでいるうちに忍者も4,5mジャンプできるようになる、というやつだ。
僕もまた忍者と同じように、知らぬ間に極薄ヒートテックを育てていたようだ。
先日、ようやくハーフパンツを買い替えた。
前のハーフパンツもユニクロで買った。もう5年前、いやそれ以上前の話か。
買った当初はそれなりに気に入っていたが、最近はなんとなくヨレってきたり、一部色も褪せてきたり、マズいな。という気がしていた。
最もマズいと思った瞬間は、同じパンツをどこぞのおっさんが履いていた時である。
ああ、これはマズいと思う。高校生・大学生スタイルを引きずっているファッション無関心おっさんそのものだ。
人のふり見てなんとやら。
と思いながらも、1、2年踏ん切りがつかなかった。ようやく、気合いで買い換えることができた。
いつもの美容師さんにファッションについて聞いても、髪型よりは明確なアドバイスはもらえない。
「やっぱ清潔感ですよ」
ここでも清潔感だ。しかし髭・髪型・眉等々ならわかるが、ファッションの清潔感は分からない。
「服が全然分からないんですよね」
「大丈夫ですよ。XXさん清潔感ありますよ」
お世辞には聞こえないが、面と向かって「清潔感ないっすよ」とはいえないはずで、割り引いて聞く必要はあるだろう。
どちらにしても自分で分からないんだからしょうがない。
当該の美容師さんは「もうユニクロも無印も高い」とこぼしながら、古着屋で500円のシャツを探しているそうだ。
そういうことができるエネルギーと、センスがないとダメなんだなあと思う。
もういっそ諦めるか。いや、手をこまぬいているわけにもいくまい。定期的に、機械的に古くなった服、あるいは着なくなった服を捨てて、新しい服を買う。それができない。どうすればいいのか。こうなったらTODOで管理して、無理やり進めるか。などと思い詰めている。