sakanatonikuの日記

料理、アニメ、映画鑑賞と作詞作曲(趣味)

エンタメが面白くなくなる現象

GR IIIx 西荻

例えば、たまたま映画クレヨンしんちゃんの予告編を目にして「とーちゃーん!!」「しんのすけー!!」などという声優の迫真の絶叫を聞くと、直ちに目がうるっとするのである。あるいはNHKのニュースなどで健気な子供たちの話を聞いてしまうとやはり目頭が熱くなる。

 

歳をとると涙もろくなる、というやつだ。

 

「歳をとってもむしろ感受性は豊かになって、却って物事が新鮮に映るのだな」などと思ったら大間違いで、前頭葉が萎縮して感情のコントロールが効きにくいがために、うっかり涙もろくなってるだけ、という説。まことに老化現象に寄せる解釈は手厳しい。

 

まだアラフィフなんだけどさ。

 

GR IIIx 西荻

感情のコントロールができないとなれば、どんなコンテンツでも大笑い、大泣きの感情失禁大洪水で大いに楽しめるかといえばそうでもない。むしろ逆だ。

 

小説には作者の都合で嘘ばっかり書いてある。魔法で空を飛んだり、美男子ナイスガイと恋の鞘当てをしたり、目から(手から)ビームが出たり、ライバルに打ち勝ったり、井戸の底から壁を抜けたり、全て作者の都合である。

 

都合がいいよね、と作者の嘘に乗る気満々で読む。しかしすぐに興醒めしてしまう。前頭葉が萎縮したからといって、嘘に寛容になるわけでも無いらしい。

 

ドラマも映画も同じである。

 

GR IIIx 西荻

ところが、妻などは韓流ドラマとかNetflixのアニメなど「何が面白いんだ?」というコンテンツを見て飽きない。ご丁寧に全て鑑賞して次週を楽しみにしている始末だ。(NetflixのWednesdayは僕も面白かった)

 

上の子(成人済み)に「あんなドラマ見て面白がってるとは、ママはバカじゃないか」とクサしたら怒られた。他人の趣味に口出しするなとのこと。もっともである。

 

GR IIIx 西荻

人が熱心に作ったせっかくのコンテンツに、シラけてばかりでは人生がつまらない。

 

嘘にシラけるなら私小説を読もうと思った。私小説でも必ず嘘はあるはずだが、Webに蔓延る日常エッセイ漫画よりもご都合主義ではないはずだ。西村賢太の「苦役列車」を読んでみた。退屈せずに最後まで読み通せた。しかし、他の数冊でやめにした。読んだおっさん(僕)の元気が出る作家ではない。

 

さて、困った。読むものがない。

 

GR IIIx 西荻

先日「君どう」の流れで「半藤一利宮崎駿の 腰ぬけ愛国談義 (文春ジブリ文庫) 」を読んだ。宮崎駿夏目漱石の「草枕」を愛読していた時期があったらしい。

 

夏目漱石といえば高校の教科書に載っている作家で「このセリフから読み取れる主人公の思いを50字でまとめよ」などとテストに出てくるやつだ。

 

教科書で読んでそれなりに面白かったが、エンタメとして読む作家ではないと思っていた。何より古い。明治の人である。それでもまあ、と試しに「草枕」を読んでみたらこれがなかなか面白い。文章、テンポ、情景、全てが心地よい。調べたら漱石39歳の時に発表した作品らしい。天才か。

 

平行して「こころ」を何十年ぶりかに読み返したらやはり面白い。どうやら凡百の作家とはレベルが違うのだと感じた。さすがに現代性はないけれど、今の時代にも十分読む値打ちがある。

 

暑い夏にクーラーを弱目にして、蝉の声を聞きながら夏目漱石をめくっていると、中学生の夏休みに戻ったような懐かしい気分になる。そのままウトウトと昼寝に入るのもまた格別である。

 

大人になって漱石を読み返したら、子供のときと全く違う印象を受けた、というわけでもない。中高生の僕もそれなりに頑張って理解していたようだ。漱石以外の古典文学はどう感じだろう。他の作家の作品も読んでみようと思っている。

 

GR IIIx 西荻