昔は5km以上歩くと膝に痛みが出ていたものだ。
去年だったかな。NHK朝イチのウォーキング特集を何気に見ていたら、歩き方のコツを解説していた。そして気がついた。自分の歩き方はどうやらイケてない、と。
膝を庇って歩こうとしていたのが、かえってまずかったのだ。腰骨と股関節を上手く使って歩くのだ。膝関節の動きは最小限が良い。(あまり正確に説明してないがそんな感じ)
歩き方を変えてから距離が伸びて、最近は週一ペースで10km以上歩いている。
東京23区の住宅街歩いたって面白くないでしょう?
どうせなら山とか高原とか、せめて観光地を歩きたいよね。
僕も最初はそう思っていた。でも実際に歩いてみると意外とそうでもない。
半径3kmくらい、生活圏の主要な道路には見覚えがある。新鮮さはない。
かといって行ったことのない地域を歩いても、これといって目新しい風景はない。
アスファルト舗装。賃貸アパート。分譲マンション。戸建て。新しいのがあったり古いのがあったり。ときどき空き地や農地。
でも一つとして同じ建物はない。同じようなコンビニ造りだって3階建売住宅だって、何かが違うのだ。古び具合、車、自転車、植木鉢などなど。
そしてそれぞれの建物にはそれぞれ人生がある。
どんな人が住んでるんだろう?練馬の外れの鉛筆ハウスだって数千万円はするぜ?マンションも戸建も修繕費用が大変だよな。お。こんなところに高級外車が。古そうな賃貸アパートからは、やはり古そうなおばさんが出てきたな(自分も大概古いおっさんである)などと観察しながら歩くと意外と退屈しない。
寺の掲示板で見かけた。
怒りは常に愚行に始まり、悔恨に終わる。
ちょうど嫌なことを思い出しながら歩いていた。苦笑しながら撮影。
なるほど正しい。
怒って反射的に怒鳴ったりするのは最悪の悪手である。
煽り運転マンも正義マンもカッコ悪い。
「怒る」のは時代遅れの昭和仕草という風潮。「だる」くて「うざ」くて「ダサい」のである。今も「ダサい」とか言うのだろうか。
怒るおじさんは若い子にも嫌われる。
主語がでかいのは承知で進める。
仕事でアラサー辺りを見てると人との衝突を避ける傾向があると感じる。「なあなあ」とか「わかりみ」といったゆるいコミュニケーションを必死で維持しようとしているのか。衝突はもちろん、意見の細かいすり合わせすらも避けている気がする。
僕がアラサーだった頃、20年前はどうだったかな。衝突を嫌がる人も多かったけど、今と比べたら熱くてうざい人がもう少しいた気がするけどな。
組織がまずい方向に走った時に、それを何とかしようとするのは「怒り」じゃないかな。血圧が上がって、そりゃ怒鳴ったりはダメだけど、上司に直談判したり、周りに熱く語って変革しようとする、その原動力に怒りの要素がないと難しいのでは?「怒り」の感情を絶対悪と決めつけるのはどうなのか。ブッダは人間の愚行を見て怒らなかったのか。
理不尽を冷静に受け止めるのは前提として、諦めながら受け止めるのか、怒りながら受け止めるのか。若い子ももう少しアグレッシブでもいいんじゃないか?
自分の若い頃を思い出す。抵抗することに疲れ、上司に直談判できなくなった当時のおっさんたちは「若いなあ。でも頑張れよ」と思いながら、若くてイライラしていた僕たちを生暖かく眺めていたような気もする。
でもきっと、今の時代に抵抗するなんて「だる」くて「カッコわる」いんだろうな。
などと思いながら歩く。
練馬から埼玉の和光市に入る。
いわゆる陸の孤島で、周辺に駅はない。
車社会である。
それでもちらほらと飲み屋や肉屋、八百屋があって安心する。個人商店はいいものだ。飲み屋に通う近所のオヤジや、カートを押して八百屋に向かうお婆さんの気配がする。近隣の生活を感じる。
とはいえ経営は厳しいのではないか。住宅兼用の家賃なし+年金でなんとか続けているのではないか。などと愚考する。
そろそろトイレが気になる。
経験上、埼玉に入ると公園にトイレが備えられていないことが多い。
左上。東京にあればそこそこ広い公園だが、やはりトイレはない。
今調べたら「和光市立旧白子川児童遊園地」というらしい。和光市と板橋区をまたいでいる。名前から判断すると所管は和光市だろう。
右上、左下は同じ公園で結構広い。
しかし、何もない。このくらい立派な公園なら、トイレはともかく、せめてベンチの一つや二つ欲しい気がする。(全域を歩いたわけではないので、どこかにベンチはあったかもしれない)
やはり和光市の公園だからでは?と念の為調べてみたら「板橋区立成増五丁目公園」だって。
「23区の公園はトイレが多く、埼玉の公園は少ない」経験則にはそぐわない事例であった。
右下。巨大団地が見えてきた。ここならば。
流石に巨大団地の公園にはトイレがあった。一安心である。
そして後で調べてみると板橋区。
ここを外れた小さい公園にもトイレが備え付けられていた。
西高島平周辺。
首都高回りの構造物が迫力である。
せっかくなので荒川を目指す。
右上が新河岸川。
左下が荒川。
荒川も大きいが、河川敷がとにかく広い。洪水対策だろう。
荒川区墨田区葛飾区江東区江戸川区の安全が、この河川敷にかかっている。
飽きてきたら海外からの観光客の視点で歩いてみる。
東京のインフラはこうなっておるのか。
東京の人たちはこういうところに住んでいるのか。
退屈しない。
7,8kmも歩けば、かなり無心にもなれる。
長距離散歩には意外とクセになる楽しさがあるのだ。