sakanatonikuの日記

料理、アニメ、映画鑑賞と作詞作曲(趣味)

映画:ポトフ 美食家と料理人

光と影が美しいフランスの田舎の光景。印象派の絵画のようだ。光が差し込む石造りの部屋の描写はフェルメールを彷彿とさせる。映像がとにかく美しい。

全編を彩る豪華な食材と手の込んだ調理工程。そして美味しそうな料理。

熟年夫婦の穏やかで充実した日常。そして悲劇なイベントすらもどこか静かだ。

日常への穏やかな回帰もよかった。

繊細で、穏やかで、よい映画でしたよ。

 

おしまい。世間話ならね。

 

 

以下、正直ベースで。ネタバレありです。

 

「こういう映画がいいんだよ!」と刺さる人もいるだろう。僕は刺さらなかった。以下、あくまで僕個人の印象である。

 

 

とにかく退屈な映画だった。隣に座った人も時折もぞもぞしてた気がするのもそのせいかどうか。

 

大して面白くもない。

 

爆薬の量が多いのが良い映画だ。などと言うつもりはない。小津映画でも途中退屈を覚えるけれど、少し我慢すれば見通せる。そして「面白かった。良い映画を見た」と思う。この映画は、映像は綺麗だったけど、退屈で面白くなかったなあ、という感想で終わった。

 

手の込んだ料理は、この映画の大きなテーマである。

 

ところが、肝心の料理が全く美味そうに思えない。メインテーマに馴染めないことになる。すごく手が込んでる。いい素材をたっぷり使っている。おそらくは美味しいのであろう、と推察する。しかし胃袋は何の反応もしない。よだれも出ない。なぜか。食材や調理の概念がフランスの田舎と日本で違うのである。

 

 

例えばザリガニ。ちゃんと下ごしらえすれば美味しいらしい、という知識はある。しかし食材とは認識できない。あれは近所のドブ川で捕まえて遊ぶものである。茹でて皮を剥いているのを見ても美味そうとは思えるわけがない。

 

鳥も色々出てくる。鱗のついた黒い足を茹でて皮をはいだり、ミチミチと内臓を引きずり出したりしている。魚を捌くのを見るとワクワクするが、鳥を捌かれてもピンとこない。恰幅の良いおっさんたちが、大きな鳥を切り分けてもりもり食べたり、小さな鳥に唸りながらむしゃぶりついたりしているも、当方の食欲はそそられない。魚なら話は違うのだが。

 

美味そうな牛肉にも何やら油を繰り返し掛けている。「食べたらもたれそうだ」と思うアラフィフおっさんである。シンプルにミディアムレアに焼いて塩胡椒、あるいは大根おろしと醤油で食べさせて頂きたい。あ、数切れで十分です。

 

 

ワインの蘊蓄も興味をそそられない。多分一生飲む機会はない。

 

アイスをメレンゲで閉じてオーブンで焼きました。あーね。それな。

 

牛の骨髄ですね。初めて見ました。なるほどです。

 

新鮮とは思えない生のヒラメにミルクをたっぷりかけて、オーブンで蒸し焼きに。「どうしたって生臭いだろうな」としか思えず。

 

調理法も馴染みがないものばかり。じっくり炒めたり漉したりオーブンで焼いたり。どでかい肉をどでかい鍋に放り込んだり。良いスープが取れたらしい。とっても複雑な味わいらしい。想像がつかない。出汁を取った後の野菜は捨てるのだろうか?もったいない気がする。

 

 

バベットの晩餐会という映画をBS NHKで見て、途中で退屈になってやめたことを思い出した。

バベットの晩餐会 - Wikipedia

バブル時代の映画である。当時はそこそこ話題になったらしい。東海林さだおのエッセーにも再現メニューを食べた旨の回があった。僕にはやはり退屈でつまらない映画に思えたが、こういう映画が刺さる人がいるということだろう。

 

普通、人は外国の料理を見せられても、そんなに面白くないんじゃないの?と思ったが「深夜食堂」が海外で小ブレークしたらしいことを思い出した。外国の人が豚汁や卵焼き、タコさんウィンナーを作ってる様子を見て面白いのか?・・・。

 

面白いんじゃないかな。切って焼くだけ。炒めて煮るだけ。分かりやすい。味噌も醤油も海外で手に入るだろうから、それほど想像できない味でもなかろう。深夜の新宿というやさぐれた雰囲気も料理の感興を盛り上げる。そんなんでいいんだよ、である。

 

それに対して、この映画の料理シーンにはリアリティを全く感じなかった。金はどこから出てくるんだろう?これほど食にこだわる理由は何か?この人たちって一体何なの?多くの料理が出てくるのに生活感がない。

 

それから、ジュリエット・ビノシュは死ななければならなかったんでしょうか。アラフィフとしてはこの世代の人が死ぬシーンは見てて辛いものがある。控えめながら迫真の演技だからなおさらだ。

 

というわけで「ポトフ」は僕のインプットエリアを大きく外してきたな、という印象でした。(勝手な意見であることは自覚

 

以上です。まあ、何のかんの考えさせられるのも合わない映画を見た後の楽しみである。「アステロイド・シティ」なんか「これ好きだな」で「すごく面白かった」なのだが、記事にするほど言語化できないんだよね。